遺言の種類は?どれを書けばいい?

遺言は自分の意思を残す大切なもの。「早速、遺言書を書こう!」と思い立ったものの、どうやって書けばいいのか、はたまた、自分の意思なんだから自分の好きなように書いても大丈夫なのか?といった疑問もわいてくるかもしれません。 確かに思いを残すだけならそうですが、法律的に有効なものにするにはルールに従って書く必要があります。では法律ではどうなっているのか、主に作成されるものについて説明します。

遺言書にはどんな種類がある?

遺言の種類として民法上規定されているものには大きく2つの方式があります。

普通方式遺言…日常生活の中で作成される遺言

特別方式遺言…緊急事態の時に作成される遺言。普通方式遺言ができない状況の時のみ認められる。

  ∟危急時遺言(一般危急時遺言・難船危急時遺言) 

  ∟隔絶地遺言(一般隔絶地遺言・船舶隔絶地遺言)

このようないくつかの種類がある遺言ですが、皆さんが将来のトラブルなどを予防するのに遺言を書くとなると普通方式遺言を書くことになるでしょう。その普通方式遺言には、自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言の3種類があります。

普通方式遺言

  ∟自筆証書遺言

  ∟公正証書遺言

  ∟秘密証書遺言

これら3種類の中でも、通常利用されることが多い、自筆証書遺言と公正証書遺言について解説したいと思います。

自筆証書遺言

自筆証書遺言は、その名の通り自分自身で遺言を書くものとなります。

自筆証書遺言のメリットとしては、後で説明する公正証書遺言のように公証役場への手数料などがいらないため圧倒的に費用が安く、気軽に作れることが挙げられます。

一方、デメリットとしては、作成にルールがあり、自分で遺言の全文・氏名・日付を手書して押印する必要があるのですが、このルールを知らずパソコンなどで作ってしまうと遺言として有効になりません。また、自分で書いた遺言書は自分で保管することが多く、遺言書をなくしてしまうこともあるでしょう。また、遺言書を見つけた誰かに内容を書き換えられたり、捨てられたり隠したりされることも考えられます。こういったリスクを避けようと遺言書があることを誰にも言わずにいると、実際に遺言書が必要となるときに相続人が遺言書を発見できないといったことも起こり得ます。運よく相続人が遺言書を発見できたとしても家庭裁判所で検認という手続きをしなければならず手間がかかるというデメリットもあります。

そこで、このようなデメリットを回避するために令和2年7月から法務局による自筆証書遺言の保管制度が始まりました。この制度は、法務局が遺言書の保管申請時に,民法の定める自筆証書遺言の形式に適合するかについて確認をし、原本に加え,画像データとしても長期間適正に管理てくれる制度です。この制度を利用すると、自筆証書遺言の形式がルールに違反しているや、内容の書き換え、遺言書を捨てる、隠す、発見できないなどのリスクを避けることができます。なおかつ保管制度を利用していると家庭裁判所での検認手続きがいらなくなり、相続人の手間も省けます。保管手続きにもコスト(法務局への保管申請時は3,900円)はかかりますが、後述する公正証書遺言作成にくらべて各段に安い金額で手続きができるので、現状では自筆証書遺言を選ぶリスクを低く抑えることもできるようになりました。

法務局はあまり日常的に利用することはないため、少しハードルが高いように感じるかもしれませんが、各自治体には必ずありますので、もし自筆証書遺言をお考えの方は利用を前向きにしていただけるとよいかと思います。

※自筆証書遺言保管制度の詳細については以下のページでご確認いただけます。

法務省 自筆証書遺言保管制度ページ

公正証書遺言

公正証書遺言は、公証役場で公証人に書いてもらう遺言となります。

そもそも公証役場とは、法務省の管轄する役所で、公証人とは、国民の私的な法律紛争を未然に防ぎ、私的法律関係の明確化、安定化を図ることを目的として、証書の作成等を行う、法律の専門家の中から法務大臣に任命された国家公務員です。

公正証書遺言は、その公証人と事前に打ち合わせをして遺言の内容を決定し、証人2名が立会い、作成された遺言内容を公証人が遺言者本人に読み聞かせ、内容に間違いなどがなければ本人と証人が署名押印したうえで、公証人が署名押印して作成されます。 公正証書遺言のメリットとしては、公証人が本人の意思を確認して遺言をつくるので自筆証書遺言のようにルール違反により無効となるリスクが少なく、作成された遺言の原本が公証役場に保管されるので、失くしたり書き換えられたりすることもなく、また遺言の作成記録が公証役場に保管されますので、相続が開始された後に相続人が遺言を発見することも簡単になります。ただし、作成に公証人と何度か打合せをしたり、作成に必要な戸籍謄本など書類の提出を求められるので書類を揃える時間と手間がかかること、少なくとも数万円の手数料(公証役場に払う手数料は、財産額により異なります。これは、また別の記事で解説します。)がかかること、守秘義務があるとはいえ遺言の内容を公証人と証人に知られてしまうことになるというデメリットがあります。ただ、現在の公証人役場を利用した遺言の数は平成24年には88,156件でしたが、令和3年には106,028件(日本公証人連合会ホームページ参照)となっていて増加傾向にあるようです。

自筆証書遺言と公正証書遺言ではどっちの方がいい?

これまでご説明した2種類の遺言のメリット・デメリットを整理します。

自筆証書遺言メリット
・気軽に作成できる
・費用が安い
デメリット
・無効になりやすい
・紛失、偽造、破棄のおそれ
・遺言を発見しにくい
・検認が必要
公正証書遺言メリット
・無効になりにくい
・紛失、偽造、 破棄がおこらない
・遺言を発見しやすい
・検認が不要
デメリット
・費用がかかる
・時間と手間がかかる
・内容を公証人、 証人が知ることになる

このように整理しますと、将来のトラブルを未然に防ぐという点でおすすめなのは公正証書遺言です。やはり公証人という専門家が作成するため形式だけでなく内容もチェックされるため遺言が無効になりにくく、家庭裁判所での検認も不要であり、トラブルに発展することは極めて低いからです。

とはいっても、やはり費用のこともあり公正証書遺言はちょっと…と思われる方もいらっしゃるでしょう。 また、自筆証書遺言と公正証書遺言、どちらにするにしても、私どものような行政書士がいかようにでもご相談にのります。すべて作成・保管までお手伝いすることも可能ですし、一部はご依頼者様の方でなさっていただき、必要な部分のみお手伝いすることも可能です。もし、遺言を何等かの形で残そうと思われた場合は、ぜひお気軽にご相談ください。

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