「遺言って本当に必要?いつ書く?に答えます!」

こんにちは、N&R行政書士事務所の井上です。最近、友人と会った際に、親御さんの具合が悪くて万が一があるかもしれない…という話になり、「そういえば遺言とか残しているのかなあ?」という話題になりました。改めて考えるとご両親はもとい、ご自身についても遺言というのはなかなか想像もつかないものですね。そこで、弊所でも注力している『遺言』について、わかりやすく解説していきたいと思います。

遺言は最期の意思や思いを伝える手段

遺言とは、亡くなった方が残される相続人等に最期の意思や思いを伝えるものです。

民法に定められた方法により遺言書を作成することで、財産をどのように分配するかご自身の意思を反映することができ、家族や大切な方に不要な心配や争いをさせないためにとても重要なものです。 民法上、定められている主なものとしては、ご自身で手書する「自筆証書遺言」と公証人に作成してもらう「公正証書遺言」があります。いずれもご自身が希望する財産の分け方など財産処分に関することや子の認知など身分に関することを記載します。また、ご家族に対し、なぜそのような財産の分け方にしたのかという理由や、今後も家族仲良く過ごしてほしい、などといったご自身の思いを記すこともできます。

遺言なんて、自分には必要ない、なんて思っていませんか?

よく遺言の大切さをお話すると、耳にするのは「財産が少ないから遺言はいらない」「家族の仲がいいから遺言がなくてももめない」といった言葉です。確かに、このように自分には遺言は必要ないと思われている方もいらっしゃると思います。

しかし、相続は残念ながら、ご自身がなくなった後に起こることですので、当然ご自身が関与することはできません。万が一ご自身の思い描いた未来と違うことが起こったとしても何もできないのです。

実際、財産は今住まわれているご自宅ぐらいしかないので相続でトラブルになることはないであろうと思っていて遺言を残されない例もあります。しかし、いざその時になれば、お子さんの兄弟姉妹の仲が良かったとしても、例えば、同居していた子は相続財産の家にそのまま住みたいと思い、離れて暮らしていた子は家を売ってお金を分けたいと思い、兄弟姉妹間で意見がまとまらず悲しいですが、骨肉の争いとなってしまうこともあります。こういったことが起こってしまうことを想像するのは親としては複雑ですね。実際に、令和2年の遺産分割事件の35%は1千万円以下の遺産額、5千万円以下だと78%※にもなり、相続で発生する争いは、遺産額が多いから起こるわけではないのです。 そのため、遺言は未来のトラブルを未然に防ぎ、ご家族などご自身が大切に思う方々を守るためにとても重要なのです。(※出典:裁判所ウェブサイト 司法統計)

令和2年の遺産分割事件の遺産額(出典:裁判所ウェブサイト 司法統計)

遺言はいつ書くのがベスト?

遺言が重要だとしても「自分の年齢ではまだ早い」「自分の死んだ後のことを考えるなんて縁起でもない」などと考える方もおられるでしょう。 確かに、平均寿命も延び、人生100年時代などという言葉も聞くようになった今では、60代や70代でも元気に過ごす方も多くいらっしゃいます。そのため、ご自身の亡くなった後について考える必要がない、また考えたくもないと思われるは当然です。しかし、日本人が長生きになったことは事実としても、いつまでもしっかりとご自身の意思を残すことができる体の状態でいられるかどうかは、別の問題かもしれません。むしろ、寿命が長くなった分、必ずしも健康寿命も長いとは限らないともいえますね。遺言を書くためには、遺言を書くときに遺言内容を理解して、その結果、自分の死後にどのようなことが起きるかを理解することができる能力(遺言能力といいます。)が必要とされています。もし、万が一認知症を発症してしまった場合、その後に書いたとしても、遺言能力があると判断できない場合は、その遺言そのものが無効となってしまいます。その結果、せっかく遺言を書いても、その意思が反映されなくなってしまうことがあります。そういったことからも、できるだけ早く準備し、元気なうちに書く必要があるのですね。

遺言は1回書いたら終わりではない

遺言の必要性はわかったけど‥‥もしかしたらこの先いろんな事情も変わるかもしれないし、自分が介護状態になったときに誰が面倒見てくれるかでも変わるかもしれない… あ~どうしたらいい!?決められない!という方もいらっしゃるでしょう。このように一度書いてしまうと内容を変えられないのではと心配される声を聴くこともあります。しかし、遺言は書き直せるのでそのような心配はいりません。遺言が複数ある場合は日付の一番新しいものが有効となるので、一度遺言を書いていても新たな遺言を書くことでその新たな遺言が有効となるため、時間とともに変化するご自身の状況や気持ちに応じた修正ができるのです。当然、回数の制限もないので何度でも書き直せるということですね。遺言というものに慎重だった方も、そうとわかればハードルがぐっと下がったようにお感じいただけるのではないでしょうか。

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